ナノテク医療か再生医療か?

バイオナノテクノロジー人工臓器研究会


 再生医療とナノテクノロジーは、人工臓器の未来に新風を吹き込む新しい研究分野として脚光を浴びています。

 再生医療による臓器再生は、例えば皮膚などの分野では既に臨床のレベルに到達していますが、内臓単位の大きさのものの再生となると一筋縄では参りません。特に心臓などのように動きの機能を持つ内臓の再生医療は簡単ではなく、心筋シートは作成できても、心臓丸ごとを作成するのとでは大きな違いがあり、この方面の研究はまだ飛躍的なブレークスルーがないと実現は不可能でしょう。

 人工臓器工学は、腎臓、心臓などの面では既に日常臨床の供されているものもあります。透析療法は日本全国どこにいても受けることができるようになり、腎不全患者の生命を救っています。またアメリカでは完全置換型人工心臓アビオコアの臨床治療試験が開始されていますが、欧米で開発された人工心臓はほとんどの日本人には埋め込めない大きなものになっています。そのため日本の末期的心不全患者は、補助人工心臓を装着されて移植を待つ患者がほとんどです。これも小型の埋め込み型補助人工心臓の開発は全世界で進められていますが小型化にはブレイクスルーが必要です。また、人工肝臓、人工膵臓、人工消化管などの分野では、再生医療とのコンバインが企画されています。

 従って、現状では再生医療も人工臓器工学も一長一短があり、両者がコンバインして発展を続ける必要があるでしょう。

 そのために結成されたとも言えるのが、日本エムイー学会専門別研究会、バイオナノテクノロジー人工臓器研究会です。


第1回バイオナノテクノロジー人工臓器研究会(平成15年 5月23日)

第2回バイオナノテクノロジー人工臓器研究会(平成15年10月22日)

第3回バイオナノテクノロジー人工臓器研究会(平成15年10月31日)

市民公開講座(平成15年11月1日)

第4回バイオナノテクノロジー人工臓器研究会(平成16年 1月24日)

第5回バイオナノテクノロジー人工臓器研究会(平成16年 4月26日)

第6回バイオナノテクノロジー人工臓器研究会(平成16年 7月30日)

第7回バイオナノテクノロジー人工臓器研究会(平成17年 11月5日)

第8回バイオナノテクノロジー人工臓器研究会(平成17年 3月 4日)

第9回バイオナノテクノロジー人工臓器研究会(平成17年 4月27日)

第10回バイオナノテクノロジー人工臓器研究会(平成17年 5月23日)

第11回バイオナノテクノロジー人工臓器研究会(平成17年 6月27日)

第12回バイオナノテクノロジー人工臓器研究会(平成17年 8月 5日)

第13回バイオナノテクノロジー人工臓器研究会(平成17年 10月 9日)


 再生医療の分野では、現実には臓器単位で再生させることは三次元構造などの構築の面でなかなか難しいものがありますが、神経の再生を促したり、皮膚の再生を促すマテリアルは臨床に近い線まで進んでおり、一部治療試験も開始されています。皮膚形成を促す創傷治癒促進効果を持つバイオアブソーバブルマテリアルなどは商業ベースで臨床応用されています。

 このようなナノバイオマテリアルを応用した再生医療の試みは、長期動物実験の段階まで進んでいます。図に提示するように、内視鏡画像では消化管の粘膜の再生が促されつつあります。

 これが、再生医療技術を応用して作成されたバイオナノテクノロジーによる人工消化管です。

 消化器外科手術では再建のための消化管が必要になります。食道癌手術などでは食道の再建のために開腹手術も必要になるので、患者の侵襲が大きく、体力のない患者や高齢者は手術できません。また小腸の手術後、残存小腸が短いと、短腸症候群により患者は静脈栄養なしには生存できなくなります。

 従って、このようなバイオナノテクノロジーによる人工消化管があれば応用範囲は大きいものがあります。このように再生医療技術を人工臓器の分野にも応用していくことで長足の進歩が望まれます。

 心臓の領域でも、再生心筋が注目されていますが、一枚の心筋シートはできますが、三次元的に構造を再構築して心臓を作成することは事実上不可能です。また血管の再生が困難で四層以上の心筋シートは重ねても心筋細胞が壊死するだけになります。

 ここではナノテクノロジーがブレイクスルーをもたらします。

 形状記憶合金は、体積比で人間の筋肉の千倍もの効率を誇る優れたアクチュエータとして有用性が高いですが、耐久性が問題です。

 近年のナノテクノロジーの発展はこの分野にもブレイクスルーをもたらしました。

 図に提示するように、形状記憶合金では分子結晶配列が整わずに、バラバラな方向に走る結晶が耐久性の限界をもたらすわけですが、近年のナノテクノロジーの発展はこの問題を解決し、従来型の千倍もの耐久性を具現化しています。従ってこの分野では、ナノテクノロジーの発展が再生医療の限界を凌駕していることになります。再生医療工学、ナノテクノロジー、人工臓器工学のコンバインにより、臨床応用可能な新しい人工臓器が花開いていくものと大きく期待されます。

 平成17年度は、再生医学関連の学術集会や医用アクチュエーション技術に関する協同研究委員会などとの協同での学術集会や学術研究を企画しています。

会長:山家智之 連絡担当幹事:岡本英治 

幹事:三田村好矩、山根隆志、吉澤誠、田中明、白石泰之、仁田新一、井街宏、増沢徹、


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