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東北大学加齢医学研究所 心臓病電子医学分野
東北大学大学院医工学研究科人工臓器医工学講座/ 医学系研究科内科学専攻心臓病電子医学
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新幹線でドクターコール

9月29日、東京の某社本社で会議があるとの由で東京出張。12時26分の「はやてこまち」いつものように、のんびり新幹線に乗り、パワーポイントを準備していると・・・ 「X号車に具合の悪くなりましたお客様がいらっしゃります。お医者様の方は乗ってらっしゃらないでしょうか?」との車内放送。

X号車って・・・もしかして僕の乗ってるこの車輛??・・・えっ?  周りを見渡しても誰も倒れていないようだ。  大丈夫だったのかな?  すると、もう一回同じ車内放送。

 今度は、「・・・お医者様・医療関係者の方は?」と、少し範囲を広げた感じの車内放送になった印象を受けた。しかもかなり切迫感のあるように聞こえる声。乗務員さんがだいぶ困っているように聞こえる・・・  う〜ん・・・かなり緊急の事態で、しかも誰も行かなかったのかなあ・・・Vfだったら、三分過ぎているだろうか???かなりまずいかな・・・新幹線ってAEDあったっけ?

 しかたがないので立ち上がり、周りを探すも、やっぱり誰も倒れていないみたい・・・  車内販売員さんに聞いてみると、こちらに・・・と、長椅子のある別の部屋に通される。こんな部屋が新幹線にはあったのね?・・・X号車でX号車だったので、結局私が最初で、やはりまだ誰も医師は来ていないらしい。 車掌さんから、乗車中にふと吐き気がして、吐き出して、左手が動かなくなって紫色になっていますとのお話。ううん、まずいなあ、脳卒中かな?  途中、昔のオーベンの先生も乗車しているのを発見し、二人で拝見させていただこうとするが、なんと、東北新幹線には、血圧計もないらしい。ううん、持ってくればよかったのかな?・・・ブラックジャックじゃあるまいし、救急セットなんて普通は持って歩けないよ・・・

 橈骨動脈を触れてみると、触れるは触れる・・・両手とも血圧はありそう。 呼びかけに反応もある、とりあえず意識はありそうだ。 ただ拍動リズムは典型的な心房細動。絶対性不整脈・・・脈が整っていない。 プルスとしては頻脈ではなく、いま発症した発作性心房細動ではなさそうだ。

 意識はありそうなので、お話を伺うと、朝から左手がむくんでいたとの由。途中で吐き気がして左手が動かなくなった・・・とのお話。脳梗塞か?・・・TIA??・・・何もないのでボールペンを使ってチェックするも、バビンスキーはなさそう。左手は確かにチアノーゼ、左の握力は全くない・・・全然握ってくれない感じ・・やはり麻痺か・・・。ただ、末梢循環としては、左右の橈骨動脈はしっかり触れて左右差はなさそうだ。

既往歴を伺うと、前から心房細動とは言われていて、左目が見えなくなったこともありKO病院神経科?通院中と。ワーファリンも服用しているらしい。ううん左の網膜中心動脈に血栓の既往があるのかもしれない?・・・ やっぱり心房から頭への血栓塞栓症か?・・・  急性期かどうか・・・せめて血圧計が欲しい!

 次の大宮駅まで、あと30分以上あるとの車掌さんの話。ううん早めにCTくらいとってゴールデンタイムで血栓溶解考えた方がいいかな・・・再開通させるなら、もちろん早ければ早いほどいい・・・車掌さんとお話しすると、宇都宮で途中停車できるかもしれないとのお話。どうしますか?・・・と聞かれる。  どうしろって、私がこれだけの情報で確定診断して判断しなきゃならないの? ・・・血圧計すらも、なにもないんだよ・・・う〜ん・・・。 こういう決断は大変。 乗客の皆様に大迷惑をかけるかもしれない判断をしなければならないのか ・・・商談で急いでいる乗客さんがいたらどうするの? ・・・ビジネスの損害があったら、それも私の責任でしょうか? ・・・ここには聴診器もないのよ!!!

 幸い、そのあたりで、乗客の医療関係の先生方が五人くらい集まってくださってくる。なんとか、一人で決断はしなくて済みそう・・・先生方とも相談。ここで八戸市民病院救急センターの先生もいらして相談し、やっぱりCTのある病院で早めに処置したほうがベター。との結論。  やはり、心房細動からの血栓塞栓の可能性が高い緊急の脳卒中らしいし、新幹線に宇都宮で停まっていただくことにする。急性期なら血栓溶解が適応になって完治する可能性も期待できる。宇都宮駅まで救急車が迎えに来るとのお話。ストレッチャーは?・・・ないよね?・・・救急車までは担架で・・・というシステムらしい。

 宇都宮の臨時停車をお願いしたとたん、少し左の麻痺が回復してきたようで、弱いながらも私の手を握り返せるようになってきた・・・・心なしか、左手のチアノーゼも改善傾向に見える。マーフィの法則じゃないけど・・・停車を決めると治ったりするのかな?・・・八戸市民の先生が「背中や胸の疼痛はありませんか?」と聞いている・・・そうそう、解離性大動脈瘤のルールアウトはもちろん大事です。私は初診で吐き気と麻痺と聞いたのでしたが、新幹線などでは、カンファレンスしたわけじゃないので、初診の所見が集まった医師の共通認識になっていない。こうなると医師間の情報認識の意思疎通が大変です・・・などと、思っている間に、嘔吐を始めてしまう。膿盆・・・ないよね?・・・はやり脳圧亢進か?・・・血圧計もないんじゃ・・・挿管セットなんてあるわけないよなあ・・・誤飲しなければいいが・・・

 見捨ててもおられないので、結局、ずっと脈診をしながら付き添うことになる。最初に初診してしまうと立ち去るに立ち去れません。X号車でX号車だったからなあ・・・

 ずいぶん長く感じましたが、なんとか宇都宮に緊急停車。救急車に乗っていくとこの後の予定がきついなあ・・・と思われましたが、容態も安定したのでそのままお任せすることにいたしました・・・。  ふうっ・・・・、出張の肝心な仕事の前に、どおっと疲れました。 集まってくださった五人の先生方。ご苦労様でした。

 ふと気がつくと、私の方は名乗りましたが、考えてみれば、私からも八戸の先生からも、あわただしく病歴ばかり聴き続け、嘔吐で話どころではなくなったので、結局、患者さんのお名前を伺う暇もなく、いったい何処の何方だったのかも聞けませんでしたが、ゴールデンタイムに間に合って回復してくれていればいいな・・・

PS) 福島の産婦人科の先生が殺人罪で訴えられ、話題を呼びましたが、最終的に無罪で結審になったようです。手術死と聞いて、一瞬何らかの事故があったかと思いましたが、驚いたことに、医療的には何一つミスがなかったのに、マスコミの前で見せしめのように逮捕されたとの由。しかも、その存在しない事件を作りあげた警察署が、逮捕後に表彰されたと聞き、驚いたものです。大阪の医師会が表彰に抗議声明を出したそうですが・・・逮捕を受けて「福島県に一歩でも入ったら医療行為をしてはいけない」と戒めた医師のブログも散見します。確かに正しい医療行為で逮捕されてはたまりません。  あとでふと気付いたのは、私たち五人が診療していたのは、そのまさしく話題の福島の県内通過中でした。  もちろん、福島県民と言えど、生きる権利はあるわけで、福島県内で医療するな!は暴論でしょうが、正しい医療行為をしても福島では逮捕される可能性があると聞けば躊躇するのは事実です。すべての医師が福島県内での医療を拒否したら、表彰した県警には責任はないんでしょうか?  それにまあ、新幹線の車内というのは、いったいどこの管轄になるのでしょうか?・・・そこもよくわかりません・・・ある日突然、警察から問題にされたら厭じゃないですか。正しい医療行為をしても県警は逮捕をし、逮捕をした警察署が表彰されると聞けば、福島では医療をするなという発想は、まあ医師のセーフティネットとして不可避的に発生してしまいます。

 日経メディカル調べでは、ドクターコールに応じる先生は30%前後とのこと。う〜ん、私は珍しい方の範囲に入るんですね・・・

 そもそも新幹線や飛行機で呼ばれても、自分が専門にする分野の症例に当たるとは限りません。飛行機の場合では、医師が名乗り出てやむなく医療を行い、結果として事故があった場合は、日本の航空会社では、何らかの免責処置があると聞きましたが、新幹線はどうなんでしょうか?  車内放送で医師を呼ぶからには、そういう場合の前例について、何らかの広報などのアナウンスがJRから欲しいな。と考えるのは私だけではないと思います。

 そうでないと、福島県通過中だけ医療できないというような・・・ブログなどのある意味での暴論に対しても、誰も反論できないと思います。


山家智之

Last modified:2010/12/13 17:33:27
Keyword(s):[新幹線] [ドクターコール] [車内放送]
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