高次脳神経機能の非線形ダイナミクス解析

東北大学加齢医学研究所・未来科学技術共同研究開発センター
山家智之、川島隆太

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緒言

ファミコン癲癇や、ポケモンショックの事件発生以来、人工の映像などによる視聴覚刺激が生体に与える悪影響について危惧されるようになり、厚生郵政通産などの官庁においても様々なプロジェクトチームが結成され、研究が進んでいる。

本研究では発想を変えてむしろ画像刺激の持つ積極的な意義について検討するために、最近話題に上る「癒し系」の画像コンテンツに注目し、その生体に与える影響について、心拍変動による自律神経機能解析と脳血流及び脳組織内酸素飽和度の観点から検討を加えた。

対象と方法

健康なボランティアの学生二十例を対象に、拡大スクリーンにてヒーリングビデオコンテンツを視聴させ、心電図及び近赤外線モニタリングデバイスを用いて、心拍変動と脳組織内酸素飽和度を計測した。更に同じコンテンツをヘッドマウンティッドディスプレイを用いて視聴させ、ポジトロンCTにて脳局所血流について検討を加えた。ヒーリングビデオコンテンツはテラウチマサト氏の「屋久島スライドショー」である。更に対象として、モザイク画像に、音楽を逆転させた無意味でありながら光と音の刺激の絶対量は全く同じになるコンテンツを試作し、同様に視聴させ、安静時と比較検討を行った。

結果及び結論

いずれのコンテンツ視聴時にも癲癇発作や不整脈の発生は観察されず、有意の心拍数の変化も確認されなかった。心拍変動解析の結果、スペクトル解析においてはLF成分、HF成分及びLF/HFでは、ばらつきが大きく有意差が確認されなかった。ボックスカウンティング法にてフラクタル時限解析を行ったところ、対象の逆転画像刺激時に比較して、ヒーリングビデオコンテンツ視聴時においてフラクタル次元の増加が確認された。前頭葉における脳組織内酸素代謝においては、スペクトル解析では有意の変動が観測できなかったが、アポロキシメトリーエントロピーの時間軸に沿った減少傾向が観測された。ポジトロンCTの画像では、安静時のサブトラクションでは後頭葉の血流増加が確認された。従ってヒーリングビデオコンテンツは心拍変動を支配する自律神経機能と脳血流に有意の影響を与えている可能性が示唆されたものと考えられる。